pachibee
動画検索

パチスロライターから見た「遊タイム」

2020年10月15日

日本列島に接近したかと思えば、進路を南に変えて熱帯低気圧となった台風14号。台風自体には推進力がなく、周囲の気圧状況や偏西風で流されることは知っていましたが、こんな進路になるとはビックリです。

で、その台風14号が接近していた風呂上りで「空気が冬になった」ふと感じたのです。気温は17度くらいあったようですが、南の台風に風が吹き込んだからでしょうか。肌感覚のような言葉では表しがたいものですが、いずれにせよ初めて2020年が終わりに近づいていることを感じた瞬間でした。

2020年の振り返りは、毎年恒例(?)で12月に回させていただきますが、新型コロナウイルスから派生した問題を除くと、最大のトピックはパチンコの「遊タイム」だったのではないでしょうか。これを年末に回すと、それだけで凄い文字量になってしまうので、先に処理させていただきましょう(笑)。


それにしても、日工組(パチンコの業界団体)はネーミングが上手いと思わされます。「ちょいパチ」とかも業界主導だったように記憶しています。この「遊タイム」もそう。ユーザーから見れば規定回転数到達で大当りの濃い時短がやってくるので“天井時短”という感覚になろうかと思います。

のめりこみ防止対策では、“いわゆる天井機能”とパチスロで指摘されたこともありました。天井という言葉を遣って呼ばれたくなかったから、このような名称にしたのでしょう。もう既に24機種が登場しています。この開発マインドの高さもあって、「遊タイム」という用語が定着しているように感じます。

とはいえ、若干の温度差も感じてしまうのです。業界側とユーザーの温度差です。業界側は盛り上がっていますが、ユーザーはそこまでの温度ではなく。むしろ冷めている方も多いですかね。新しいものが入ってくる時はそうなりがちなんですけど。

ということで、業界側でもなく。パチンコが疎すぎてユーザー側とも言えない私ですが。パチスロの歴史は見続けてきている者として、今思うことを書いてみようかと思います。



「遊タイム」とは、堅苦しく書くと2019年12月20日に遊技機規則の解釈基準が改正されたことによって生まれた新機能のことです。

これまでは大当り後のみ可能だった時短作動ですが、通常時に大当り確率の分母の2.5倍から3倍までの規定回数消化で作動させても良いこととなりました。また、これまで最大100回だった時短作動回数が、大当り確率の確率分母(1/319なら319)の3倍まで認められるようになりました(1/319なら1212回)。

これらを組み合わせると。ハマったらロングの時短が作動して、ほぼ大当りになる。こういうゲーム性を簡単に思いつくでしょうし、実際ここまで登場してきている遊タイム搭載機は、ほぼこの形を採用しています。

注意点は、大当り間で1回しか発動しないこと。500ハマリで100回の遊タイムが発動する機種でスルーしたとして。600回転から500ハマっても遊タイムに再度突入することはありません。細かい話は避けようと思っていますが、これだけは大事なことなので。


さてさて。業界側が盛り上がっているように見えるのは、もちろん「目標のゲーム数まで回してもらえれば稼働アップするかも」という打算はあるかもしれません。しかし、本筋は「新しいゲーム性が生まれる」ことだと思います。マンネリ打破とでも申しましょうか。ここはユーザー側としても歓迎すべきことだと思います。

逆に、ユーザー側で冷めた目で見ている方の代表的な意見は「当たるゾーンがあるので、その他が削られる」ことかと思います。大ハマリする可能性も含めての確率であって、出玉設計をされているわけです。大ハマリすることが少なくなるのであれば、その分だけ確率を低くするか出玉を削らなければ、遊技機規則で定められた出玉の幅に収まらなくなってしまいます。これに関しては、まったくその通り!と感じています。



一種二種混合など複雑なゲーム仕様もありますが、“パチンコはパチスロのノーマルタイプと似ている”と私は感じています。スタートチャッカーに入った際に一定の確率の大当りフラグを引けるかどうか。

大当りの中には色々あったりもしますが、大事なのは一定の確率ということです。パチスロもノーマル機は、レバーを叩いた際に一定の確率の大当りを引けるかどうかですね。

もちろん、AT機などは高確率ゾーンやモードがあるようにゲームによって大当り確率が異なったりもします。こうなると別物で、むしろこのタイプは天井がない機種は難しいように思えます。パチンコと最も違うパチスロ独自の文化かもしれません。

AT機をいきなり1000円で当てようと思う人は少ないかと思います。そもそも座った時点での正確な確率すら分からないのが普通です。当てるための下準備。そういった投資的な一面を持つからパチンコとは異なると言いたいのです。


「ホークⅢ」(JPS)

パチスロのノーマル機で、初めて天井救済機能が搭載されたのは5号機初期の『ホークⅢ』(JPS:2006年)でした。規定ゲーム数をハマると、ボーナスを契機に発動したリプレイ確率の高くないRTが終了し、リプレイ確率の高い純粋な通常時に移行する。純粋な通常時はボーナス成立まで継続するので、事実上の天井となる。そのような仕組みでした。

そこから5号機のノーマルには、この天井救済機能がほとんど搭載されていきます。


「ハーレムエース2」(ネット)、「ハネスロ リラックマ」(オーイズミ)


分水嶺となったのは2011年でしょうか。1月に『ハーレムエース2』(ネット)と『シスタークエスト2』(SNKプレイモア)が。5月には『ハネスロ リラックマ』(オーイズミ)が登場。ART機が席巻しすぎてノーマル不遇の時代となっていきましたが、その最後のまとまったカタマリには天井救済機能が搭載されていました。

現在のノーマル機を考えてみましょう。ノーマルも少しだけ復権しましたが、その立役者であるアクロスのAプロジェクトで天井救済機能を搭載している機種はありません。また、スタンダードとなっているジャグ系やハイビスカス系はずっとそう。天井なしのタイプが主流となっています。


なぜ、天井救済付きのノーマル機は長く続かなかったのか。その分の出玉は他から削ることになるからです。

座った段階で天井一直線を想像するユーザーは誰もいません。あわよくば1000円で仕留めたいと思っています。その確率が下がること。出玉が減らされることを良しとしていなかったんですね。これはパチンコもそうかと思います。


「タイムレスキューS」(山佐)、「タイムレスキュー777」(山佐)


これは余談となりますが。山佐は速い段階から業界とユーザーの乖離に気がついていたかと思います。2009年の『タイムレスキューS』と『タイムレスキュー777』は天井ありなしの違いの別スペックとして作られていました。ノーマル好きのユーザーが好んだのは天井なしのS。ホールが多く導入したのが天井ありの777でした。

 



ぶっちゃけまして。打てるゾーンがあるということは、打てなくなるゾーンもできるということ。天井救済で当たって即ヤメとかされてしまうと打つ気になれなくなってしまうんですね。パチスロやパチンコでも設定付きの場合。ハマっている=低設定の可能性アップとなりますし。

なので、現在の天井救済機能だらけの遊タイムは、さほどユーザーからは支持されないと予想しています。触れませんでしたが、ハイエナ行為とか治安の問題もあります。とはいえ、だから遊タイムがダメとも思っていません

状況を考えずにでも打ち続けたくなる機種であれば、多くのユーザーにとって恩恵のある話ですし。勝負時間がやや短いタイプであるならば、天井救済以外のまた違った活用方法も模索されることでしょう。まだ少ないですけどね。


「P交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION ZERO」(サミー)


個人的には『P交響詩篇エウレカセブン HI-EVOLUTION ZERO』の仕様は面白いと思っています。天井救済ではなく、当たれば大きいというチャンスゾーン的な扱い。まあ、今はまだ「遊タイム突入して当たって助かったということを体験してみたい」「体験させてあげたい」。パチスロ的には2006年の状況ではありますが。それが過ぎれば、このようなタイプも増えてくるかと思います。パチスロほどは時間がかからないんじゃないかな。パチスロでの経験もあるんだし。

いずれにせよ始まったばかりで何が正解なのか模索している段階です。これからですよ。いずれ最適解の使い方が登場し、最初は評価されない展開から始まってもジワジワと中古価格が大暴騰する未来を予想しています(笑)。


©JPS
©2010 TECMO KOEI WAVE CO., LTD. ©NET CORPORATION
©SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. ©OIZUMI
©YAMASA
©2017 BONES/Project EUREKA MOVIE ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc. ©Sammy