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チキンレースの成れの果て

2023年05月15日
明日をも知れぬ不治の病に罹ってしまったことで、もはや怖いものがなくなったと言いますか(笑)。いろいろと見てきまして、思ったことは書き残しておこうというモードとなっております。

遊技人口やホール数の減少もありますし、まさか業界が順調に発展・進化しているとお考えの方はいらっしゃらないでしょう。正直、私がパチンコ・パチスロを始めた頃から考えると見る影もないくらいの有様です。

では、みなさんは、どのようにパチスロ市場が縮小していったかと考えているでしょうか。スマホの普及による生活様式の変化、他にも娯楽の選択肢が多くなった。外的要因は、いろいろあるでしょう。ただ、私には“チキンレースの成れの果て”としか思えません。なるべくしてなったと思っております。

現在市場の中心はAT機で、話題の中心はスマスロとなっております。これ自体は悪いことではありません。しかし、それ以外はどうなっているんでしょうか。

メーカーとして売れる機械を作らねばならない。だから今はスマスロ。分かります。この流れは20年前から変わっていません。2003年頃は同じ理由で4号機の爆裂AT機だらけだった時代を経て、ストック機だらけの時代となっていました。

まあ、簡単に言うとユーザーの選別ですね。4号機当時は爆裂AT機やストック機を好んで打つユーザー層を囲い込むことに全集中しているように見えました。儲かりますもん。それ以外は眼中にございません。実はこの構造、今でも変わっていないように見えます。当時、爆裂AT機やストック機にピンと来なかった人々は、レトロ機種を多く残したホールに疎開することに。そうやってパチスロユーザーのカウントには残っていました。

5号機初期。今までの爆裂AT機やストック機が作れなくなって、各メーカーとも次のヒットシステムを模索することになります。個人的にはバラエティに富んだゲーム性を楽しめて面白かった時代だと思っています。ただ、4号機から出玉性能を大きく抑制された5号機。ギャンブル機としての出玉性能は、多くの人から良い反応は得られませんでした。そりゃそうです。「多くの人=ストック機に慣れ親しんだ客層」しか残っていないのですから。

結果、その“ストック機に慣れ親しんだ客層”を振り向かせることに業界は必死となります。ボーナスはストックできないけど、それと似たゲーム性はAT・ARTだと再現がしやすい。そういうことで、5号機中盤からはAT機が中心となって行き、6号機も同様となっています。

より効率的に利益を出せるようにより大きな母数に目を向けるのは当然でしょうが、それ以外を切り捨てていっているだけに思えます。

4号機の時に爆裂AT機やストック機に慣れ親しんだ人を100人いたとしましょう。10年後、その層に向けた5号機版のART機が作られます。それまでにパチスロを辞めてしまった人もいるでしょうし、まあ残るのは8割として80人くらいでしょうか。そして、それから10年後にスマスロが登場します。今度は元が80人からなので64人くらいでしょうか。このような形でジリ貧になっているのが今のパチスロ界でしょう。この客層しか見ていないように思えるんです。

4号機時代と違ってレトロホールに疎開することもできません。自然減少していく人数分、何処かから補充しなければならないのに「刈り取ることに必死で、種を撒くことを忘れている」んです。パチンコ・パチスロは知っている。ただ、今の機種は好みでないので打つ回数は減っている。そんな層を掘り起こすのは、新規に開拓するより易しいと思うのですが。

やっとTVCMは解禁されましたが、パチンコ・パチスロの露出は多くありません。ホール数の減少により目に入る機会も少なくなりました。レトロを売りにしていたホールもその多くが閉店してしまいました。流行のシステムとは好みが違う人をなんとか繋ぎ止めることが難しいのです。大昔は、解禁の年齢になった人が自動的に補充されていきました。眼にしていたからです。親からお土産として一般景品のお菓子をもらったことがあるからです。しかし、それも今はありません。若い人がパチンコ・パチスロを知っていたら奇跡と思うくらいです。

このままで行くとジリ貧。でも、利益のためにその道を進むしかない。まさにチキンレースです。

このように書くと「佐々木はノーマル系が好きだからな」と思われそうですが、そうではありません。AT・ARTに限らず、1つのシステムにオールインするのは危険と感じています。

1985年のパチスロ法制化から、ボーナスについては必ず書かれているんです。それに対して小役ナビ(AT・ART)は、今でもまったく書かれておりません。6号機に入ってからも段階的に緩和されているように、所轄官庁の警察庁が首を縦に振ってくれるかにかかっております。法改正されなくても、気が変わって「やっぱダメ」と言われたら終わりなんです。自分たちだけではどうにもできないものなんです。

もし今、AT・ARTが禁止されたとしたら(業界全体の雇用を守るためにもそんなことはないと思いますけど)誰が残るんです? そういう時のために幅広い客層を繋ぎ止めておくことが大事ではないでしょうか。次にヒットするシステムが読めない以上、それを好きになる客層が読めないのですから。

昭和から平成初期のホールはそれができていたんです。儲かる機種を打たない人でも遊べました。「トントンで遊んでいるうちに、儲かる流行の機種でたまにお金を落としてくれればいいよ」そんな感じでした。そもそもパチスロなんて、儲かるパチンコの片隅に置かれて、ほぼ利益は度外視でしたからね。そういうアマい状況だったので、それを中心に立ち回るようになったのが今のアラフィフです。要は余裕がないんです。今のホールも。お客さんも。そしてメーカーも。

近所の中小店向けの機種を作っても、そもそもの資金力がなくて買ってもらえない。繁華街の大型店が買ってくれるように広い商圏から人を呼べるような派手な機種を作るしかない。そんなメーカーの論理も痛いほど分かります。ただ、全体のことを考えたら偏りすぎることが多すぎませんかね。

文化として、歴史として。長く残していくには大局で物事を見られる存在が必要かと思います。

まあ、今回は機種方向だけになってしまいましたが。2000年頃から始まった高価交換の流れ、低交換率の縮小もそうですな。キャリアの長いパチスロ好きは低交換率が良いと言うことが多いものの、実現するのは非常に困難だと思っています。それがチキンレースというものです。