pachibee
動画検索

新機種導入

「パチスロナイツ」に見る可能性

2023年07月15日
7月3日より導入開始となっている山佐ネクストの「パチスロナイツ」。ATで作られる擬似ボーナス機ですが、いわゆるノーマルタイプの未来を感じました。しかし、導入台数が非常に少なく、まだ体感できていないという方も多いことかと思われます。一体どのような部分に未来を感じたのか。そこに絞って書きたいと思います。BB中(擬似ボーナスですが)の手順など基本的な打ち方については、動画などを参照していただければと存じます。

▲7月3日に導入済みの「パチスロナイツ」

みなさまご存じの通り、6号機では純増280枚以上のリアルボーナスを持つことができません。ボーナスが唯一メダルを増やす契機となるノーマル系は、作るのが難しいのが現状となっています。それに対してAT系は、内規の変更などでいろいろとできることが増えています。そのような流れもあって市場にはAT系ばかりが登場することとなっています。

それも時代の流れでしょう。残ったホールの規模や立地などもあって、AT系のほうが求められているし、利益を出しやすいのは分かります。ただ、私のような昔を知る人間は、やっぱりノーマル系を打つと安心しますし、打ったなあという感覚が得られます。仕方ないです。ノーマルばかりしかなかった頃に「パチスロって面白い」とのめりこんだ人種なのですから。

「パチスロナイツ」に可能性を感じたのは、いろいろありますが。

1000円で当たるかもしれないというノーマル打ちにとって、もっとも大切な要素がしっかりあることです。AT機と違って、ゾーン抜けで放置されて覚悟しなければ手を出せないなんてこともありません。本機の擬似ボーナス契機はいわゆる“リーチ目役”のみ。もちろん一発抽選です。ここまで回せば必ず当たるとか、アツいゾーンなどがない分、どこからでも当たるチャンスがあります。そういう意味では完全にノーマルタイプです。

次に当たった時の手順の流れが完全にノーマルのそれとなっていることでしょうか。

▲フライングBETで擬似遊技が発動

ジャグ系など、リアルボーナスがあるタイプの場合、ボーナスが成立したら1枚掛けで揃えるのが是とされていることがほとんどです。この「パチスロナイツ」の擬似ボーナス開始契機は、ボーナス図柄の入賞。しかし、リアルボーナスではないのでフラグを持ち越すことができません。

そこで採用されているのがフライングBETです。本機でフライングBETをすると必ず擬似遊技が発動します。ここで擬似ボーナスの権利を持っている場合はボーナス図柄が揃い、権利を持っていない場合はボーナス図柄が揃いません。当たったと思ったらフライングBETでボーナス図柄を揃える。結果的にですが、ノーマル打ちなら当たり前で、大切にしているリズムがそのままなのです。

補足的に書いておきますが。ボーナス図柄を揃えるのに、まだ告知されていない段階では目押しが必要。告知された後は適当打ちでも揃ってくれます。「当たったんじゃないか?」という時は、目押しをして揃うかにドキドキ。当たっていると分かっている時は、サクサクとゲームを進行させる。そんな気遣いを感じたりもしました。

ただ、泣きどころもあります。リアルボーナスのフラグではないので、持ち越すことができません。「あれ? 怪しいかな?」と思っても、次のゲームでリーチ目が出て「やっぱり当たっていたか」と確認することはできません。完璧を目指すなら、割と気を張りつつ毎ゲームを消化する必要があるかと思います。

そういう時にネックとなるのが、当たりパターン(リーチ目)の経験値不足でしょう。告知されたは良いけど、何で当たったか分からない・・・なんてこともあるはずです。

▲BB中に確認できる

何ゲーム前のこれで当たりましたよ。そんな“決まり手”をBB中に液晶で表示してくれます。これを見て経験値を積みながら打てば、分からないまま当たって、結局分からないままということはなくなるでしょう。目指せオール“1G前”。

そんな打感として“ノーマルの良さを再現している”と感じたのもありますが、密かに凄いと思っているのが“リール配列の再現”です。

5号機中盤以降、1リール20コマが大流行しています。パチスロは、押した位置から最大で4コマまでしかスベりません。目押し不要で揃わなければいけないリプレイを例にします。20コマリールの場合、5コマ置きに4つリプレイがあれば取りこぼすことはありません。それに対して21コマリールの場合、リプレイを5つ用意しなければなりません。

リプレイだけではなく押し順小役などもあり、20コマリールのほうが5で割り切れて配列を作りやすいんです。言葉は悪いですが、5コマをしっかり作って4回コピペすれば良いのですから。そして、ブランク図柄やボーナス図柄を変えたりすれば見栄えも完成です。

ではなぜATを擬似ボーナスとしている「パチスロナイツ」は21コマリールなのか。初代がそうだったから。安直ですがそうです(笑)。

▲2001年2月に登場した初代(4号機)

それで終わっては元も子もないので。なぜ初代は21コマだったのか。4号機の時代、総出目数と有効ライン数、そしてAタイプかBタイプかによって許されるボーナス確率の幅が決まっておりました。総出目数と有効ライン数は多いほど。AタイプよりもBタイプのほうがボーナス確率を高くできました。

Yタイプはって? 4号機までBIGは最大30GのJAC IN(REG)確変状態となっていまして。JAC IN(REG)が3回であればAタイプ。2回以下であればBタイプと分類されていました。初代「ナイツ」のJAC INは1回。2回以下ですので、分類上はBタイプということになります。

“時代”というのですかねえ。2000年頃は“他社と違う”というのが重視されていまして。“業界初”という言葉が大好きなところが実に多く。そのためネーミングが言ったもの勝ちな状況でした。中身同じでもネーミングが違ったというのもよくある話。今では統一されているARTという用語も、それを浸透させたサミーの初代「ディスクアップ」や「キャッツアイ」ではARと表記していたくらいです。ストック機辺りですかね。各社共通のワードを使い出したのは。

“Yタイプ”もその一環。いわば山佐の言ったもの勝ち。初代はJACゲーム1回という他社にはない要素を“Yタイプ”と言っていて納得もしていましたが、正直なところ6号機「パチスロナイツ」で“Yタイプ復活”と言われても「どこの部分が?」と思ってしまうのは事実です(笑)。なんとなく、Yタイプと呼ばれた初代のゲーム性復活というニュアンスは分かりますが。厳密にはYタイプでなくて“ツインBB”でしょと思ってしまいます。

いかん脱線しました。Yタイプ、Bタイプ。どちらでも良いですが、初代が21コマリールを採用していた理由は、ボーナス確率を高めたいからでした。Aタイプにしていないのもそう。1リールが20コマならば「20×20×20=8000」総出目数は8000通りです。それに対して21コマなら「21×21×21=9261」。9261通りのほうがボーナス確率を高くできることになります。

また、総出目数が多いほどリーチ目も多く用意できることになります。5で割り切れない21コマリールだと歪な箇所を作る必要があり、それが味となってリーチ目をバラエティ豊かにすることもできます。ボーナス確率を高くできるだけではなく、出目を豊かにするためにも4号機時代は21コマリールが基本とされていたのです。

それに対して5号機以降は20コマリールの1ライン機が目立つようになってきています。これは、総出目数と有効ライン数がボーナス確率に影響を及ぼさなくなったからです。というか「モンキーターン」以降、リアルボーナスのないゲーム性が浸透していきました。リアルボーナスがないのでしたら、いくら確率が悪くしか作れなくてもまったく問題ありません(笑)。

それならば適当打ちでも、押し順小役やリプレイを取りこぼさないように5で割り切れる20コマリールのほうが作りやすい。そういったことから20コマリールの機種ばかりとなっているのです。

そんな中、6号機「パチスロナイツ」は、結果的に中身ATの擬似ボーナスでメダルを増やすゲーム性でありながら、21コマリールでリール配列も初代と同じままです。ATメインに作り直すのは簡単ではないはずです。そこを実現させているのが凄いなと。

その昔、ノーマル系として名を馳せた機種を21コマリールのままでリメイクする。それだけでも感涙ものでありますし、他のメーカーでも復刻していただきたいタイトルがいくつもありますが。

特に「パチスロナイツ」のようなツインBBタイプは、相性が良いように感じられます。あ、当たり前のように昔の用語を使っていました。ツインBBとは、枚数の取れる偉いBIGと、そんなに枚数の取れない偉くないBIGの2種類あるタイプのことです。「パチスロナイツ」でいうならば、BB中の小役ナビが出るハイパーBBが偉いBB。ナビが出ないチャレンジBBが偉くないBBです。このボーナスのネーミングも言ったもの勝ちです。過去にはチャレンジBBが偉いBBの機種もありました(笑)。

偉いBBの場合、小役ナビが出るので有利区間であることが必要です。その上限ゲーム数が伸びた6.5号機、差枚数管理となった6.5号機のタイミングで、有利区間を必要とするツインBBタイプというのも内規を美しく使っているなと感心させられます。

いや、1回の当たりで300枚以上出したいなら擬似ボーナスにするしかないのですが、有利区間も使うあたりが綺麗だなと。この形が定着したならば、いろいろ二の矢、三の矢が思い浮かぶんですよね。「ハイパーラッシュ」とか「ファウスト」「メフィスト」とか。

もし軌道に乗りましたら、ツインBBではありませんが「イプシロンR」と「アラベスク」もお願いいたします。サウンドだけでご飯三杯はいけます(笑)。


YAMASA NEXT