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結論の出ていないアイデア(ノーマル機)

2021年03月15日

先々月の「6号機はダメな子なのか」の中で、ノーマル機は遊技機規則に書かれていることがほぼすべて。ボーナス獲得枚数などスペック面が変更されるときには7号機ということになる。そう書きました。ただし、「当たって楽しい・揃えて楽しい」そんな古くからの醍醐味が封じられたわけではない。とも。

5号機の遊技機規則は6号機と内容は同じですが、その前の4号機ではボーナス確率の許される幅も遊技機規則で定められていました。

6号機では、どうやったらボーナス獲得枚数を増やせるか。どうやったら通常時のベースを下げられるか。そのようなところに注目されがちですが、1990年代後半の4号機時代は、どうやったら約1/240が上限となるボーナス確率を上げられるか。各メーカーの開発者はここに苦心していました。

まだ付加機能もない時代です。ボーナス確率がほぼ一緒だと、どうしてもスペックも似ることとなります。“リール配列の妙”といった進化にも限界はあります。

どうやって新たなゲーム性を作り出すか。その追求は、2000年代の爆裂ATやストック機に帰結するわけですが、その過程で登場したものの爆裂AT機などに押されてマイナーな存在で終わったアイデアもありました。

その発想はダメだ。面白くない。そういった答えが出る前に、ほかのシステムが主流になって作られなくなってしまったアイデアです。正確には、違った形(ストック機の一部として)で使われていたりもしたんですけどね。

それがマルチライン機です。有効ラインが通常の上段・中段・下段・斜め2本の5ラインでない形ですね。5号機以降はATやART機を中心に、むしろ1ラインのみが大流行。そんな時代に逆行しているアイデアだからこそ、発想の転換で考えてみたいかなと。

<レインボークエスト>見た目からして違えば、攻め方(押し位置などの考え方)も変わります。アイデアが煮詰まったらルールを変えるのが一番ですが、それもできないなら発想を変えるのも一つの手段でしょう。まだ、ダメだという烙印は押されきっていませんし。


1990年代終盤にマルチライン機が登場したのは、前述の通り“ボーナス確率に変化を与えるため”でした。5号機以降は撤廃された考え方なので、細かく覚える必要はありませんよ。

BIG絵柄は赤7のみの21コマリールで、左リールに3つ。中リールに2つ。右リール に1つ配置されていたとしましょう。21コマリールなので、出目の総数は9261通り。そのうち赤7が揃っているのは「3×2×1=6」パターンが、それぞれ有効ライン分の並び方があるので「6×5=30」の30通りとなります。

「9261÷30=308.7」リールが無制御で止まってくれるなら1/308.7の確率で揃うことになります。この基準値から許される幅はこのように計算します。

上限:9261÷(30×1.3)=237.46
下限:9261÷(30×07)=441.00

この頃、乱数の総数で65536を採用していたサミーなどは、設定6のBIG確率が1/238.31(275/65536)。16384だったユニバーサルや山佐などは、1/240.94(68/16384)となっていました。


さて、確率を上げるためにはどうしましょう? 30の部分の基本数値を大きなものとすれば良いのです。もしくは、9261の部分を少なくするか。そこで生まれたアイデアの1つが7ラインなどのマルチライン機です。

BIG絵柄の配置が6通りのままでも、有効ラインが増えれば「6×5=30」の部分を「6×7=42」とすることができます。同様に計算してみましょう。

上限:9261÷(42×1.3)=169.62
下限:9261÷(42×07)=315.00

ほら、確率を上げられることになりますよね。

もう一つ別の方法は、BIG絵柄の出目の総数を30よりも多くすることでした。しかし、Aタイプと呼ばれるものはBIGの組み合わせが、出目の総数の1/1500を超えてはならないという別の規定がありまして。6通りが最大なのです。単純に絵柄配置を増やすことはできません。

AタイプではなくBタイプとすることで、出目の総数の2/1500まで配置すること。単純計算で12通りまで配置できるので、フルにやると1/118.73〜1/220.50となります。ただ、この方式、5号機以降ではあまり意味をなしません。ボーナス確率の許される幅という概念がなくなってしまいましたから。


というわけで。マルチラインは、当時のレギュレーションの抜け道のような存在として生まれたのです。そして、その抜け道はもう必要ありません。


現在、1ライン機が主流となっているように“有効ラインが少ないほど作りやすい”のは確かです。余計なところで揃ってしまうなど、小役の配置の制約も大きくなってしまいます。

1ラインでもBIG絵柄の組み合わせが1通りでも。自由に確率を設定することができます。こんな面倒くさいものは作りたくないでしょう(笑)。それこそ、各メーカーの大好きなスペックを追求する過程で生まれたシステムです。

スペックがどうにもならないのであれば。楽しみやゲーム性を追求する方向でアイデアを活かせたりできないものでしょうか。
写真右の「ビーナスセブン」は、「中・中・上or下」のEXラインで揃えば特殊ファンファーレで祝福。BIGサウンドも7ラインだけに7拍子と凝ったものでした。そういう意地を楽しみたいんです。写真中の8ライン機「エイトマン」もありましたね。私のような養分打ちには、出るor出ないよりも。そちらが重要です。

日々、目から血が出るほど新しいアイデアを模索されている開発さんにはとてもじゃないけど勝てません。だからこそ、マルチライン機のような発想が出てくることも期待しています。まあ、5号機以降でも模索されているんですけどね。

<A-SLOT DARTSLIVE>どう表現したら良いのだろうか。サミーの「A-SLOT DARTSLIVE」は、有効ラインが枠2つ上と枠下を使った8ラインとなっています。ここにBIGを構成する絵柄が止まれば、センターの非有効ラインにソレっぽい絵柄が必ず並んでくれます。見た目上は中段のみの1ラインにも見えますね。こういったアイデアも出てきています。

まあ、BIGが適当打ちで揃ってしまうのが、ノーマル打ちにとって面白いとは思えなかったりもしますが(笑)。ただ、何かやりようがあるというか、アイデアの卵のような気もしています。

それこそ6.1号機では、メインリールとしてミニリールを使った演出用の液晶リールも認められるようになりましたし。

<タコスロ7R>アクロスでAプロジェクトが始まる前、ユニバーサル系は7R筐体を使っていました。メインとなるミニリールが単調とか、そういったバランスの問題もあって人気とはなりませんでしたが、これもまだ使えそうなアイデアではありますね。

まあ、なんにせよ。枚数を出せないのであれば、当たって楽しい方向のアイデアを溜め込んだり、膨らませる時期になってくれればと思っています。